ライター 山口歩夢
今回の記事は、肩関節疾患の代表の一つである「肩峰下インピンジメント」についてです。この疾患を診る上で、特に重要なのが「第2肩関節」の存在です。今回は、肩峰下インピンジメントを第2肩関節の視点から紐解いていこうと思います!
第2肩関節の機能解剖
肩関節には肩甲上腕関節、胸鎖関節、肩鎖関節という解剖学的関節と、第2肩関節、肩甲胸郭関節、C-C mechanismと呼ばれる機能的関節があります。第2肩関節は、烏口肩峰アーチと上腕骨頭からなる機能的な肩関節になります!この烏口肩峰アーチと上腕骨頭間に存在するのが、肩峰下滑液胞と腱板です。
第2肩関節の主な役割は、肩甲上腕関節の補助です。肩関節挙上時に上腕骨頭が過度に上方転位しないよう、肩峰下滑液胞がクッションの役割を担っています。また、烏口肩峰アーチによって腱板の一つである棘上筋腱を上から押さえ込むことで、腱板の支点を形成する作用もあります。以上の二つから、肩甲上腕関節を補助する役割を担っています。 これらを踏まえて、肩峰下インピンジメントがどのような病態なのか、確認していきましょう!
肩峰下インピンジメントの病態
肩峰下インピンジメントが生じる原因は、大体が第2肩関節にあると言われています。先述したように、烏口肩峰アーチと上腕骨頭の狭い隙間に、肩峰下滑液胞と腱板が詰まっています。これらの組織に滑走性がない場合や炎症による組織肥厚によって圧縮ストレスが増強し、挟み込まれた状態を肩峰下インピンジメントといいます!
次に肩峰下インピンジメントの評価についてご紹介していきます。
肩峰下インピンジメントの評価方法
①肩峰骨頭間距離(Acromio-Humeral Interval;AHI) 単純X線画像において評価することができます。肩峰下インピンジメントを定義づける距離はないですが、6mm以下の場合、腱板広範囲断裂が発生するという報告があります。正常値は7~14mmであるため、それより狭小している場合はインピンジメントを疑ってもいいと思います。
②Neer impingement test
まず、対象者の前腕遠位部と肩甲骨を把持します。その後、検者は対象者の上肢を挙上させ、インピンジメントによる疼痛の有無を確認します。ここで大事なのは、単純に特殊テストを行わないことです。どの角度で、どの場所に、どのような質の痛みが生じるのか。私の場合、最初はあえて姿勢を崩したまま挙上を行い、疼痛が出現した場合は、次に肩甲骨の誘導を加えながら疼痛の有無を確認します!
③フォースカップル機構
今回は、有名な三角筋と棘上筋のフォースカップル機構について紹介します。結論から述べると、フォースカップル機構は、アウター筋とインナー筋の共同作業です。ここで言うアウター筋は三角筋、インナー筋は棘上筋になります。これらが協調的に働くことで、スムーズな肩関節運動が可能になりますね!
フォースカップル機構が破綻している可能性があるときはどのような時か。簡単に言うと、“頑張ってどうにか肩を動かそうとしている人”はフォースカップル機構が破綻しているイメージがあります。特に炎症期では、局所の疼痛が強いため、アウター筋が過剰に働きやすいです。なので、肩関節自動運動をみるときには、「時期、疼痛部位、頑張り感…」などを確認してみましょう!
今回の記事では、肩峰下インピンジメントの評価方法までご紹介しました。次回は肩峰下インピンジメントの介入編をご紹介したいと思います!ご覧いただき、有難う御座いました!
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