機能解剖学視点から考える腰痛〜椎間板性腰痛編②〜

ライター 井上了太

前回(内容はこちらから)は腰椎のmobilityについて考えてみました。今回は腰椎と骨盤・股関節の関係性がどのように椎間板性腰痛に関わってくるのか考えてみたいと思います。

 

< Hip-Spine Syndromeについて >

 

脊柱(特に腰椎)または股関節のどちらか一方の病変が他方の病変へ影響を及ぼすことがあり、このような両疾患の密接な関連性のことを「 Hip-Spine Syndrome 」といいます。つまり股関節の状態が悪ければ腰椎への負担が大きくなり、腰椎の状態が悪ければ股関節への負担が大きくなるということです。

 

ではこの両部位の関係性はどのようになっているのか知っておく必要がありますね。そのため基本的なところを順番に説明していきたいと思います。

 

 

< 腰椎骨盤リズムについて >

 

前屈時の腰椎骨盤リズムは基本的に「腰椎屈曲-骨盤前傾-股関節屈曲」の3部位の運動により成り立ちます。しかし腰椎または股関節のどちらかに可動域制限が存在すると、もう一方の部位での過剰運動がなければ運動が成り立ちません。

 

要するに股関節屈曲制限が生じていると腰椎の屈曲運動にて代償してしまうことになってしまい、腰椎は屈曲位になると椎間板内圧が高まるため椎間板性腰痛の原因の1つになってしまうということです。

 

 

< 腰椎屈曲とSLRの関係性 >

 

股関節屈曲制限の因子は多々ありますが今回はみなさんがよく使うSLRとの関係性について考えてみましょう。

 

SLRとはみなさんご存じの通りStraight Leg Raisingの頭文字をとった呼び方で下肢伸展挙上のことを指します。基本的に股関節と膝関節の2つの関節を跨いで付着するハムストリングスという筋肉が制限因子となります。ハムストリングスは坐骨結節~脛骨また腓骨に付着しており、股関節屈曲+膝関節伸展にて伸張されます。ハムストリングスは坐骨に付着しているため骨盤のアライメントに関係してきます。もしハムストリングスの柔軟性が乏しくなれば以下のようなことが生じることになります。

 

 

「 ハムストリングスの柔軟性低下 → 骨盤後傾 → 腰椎屈曲 →  椎間板内圧上昇 」

 

 

このような状態では静止立位でも骨盤後傾位となり腰椎の生理的前弯がなくなりフラットになってきますし、前屈運動では股関節屈曲骨盤前傾という運動が制限され、腰椎での過剰な屈曲運動を強いられることになります。もともと下位腰椎は上位腰椎と比較して可動性が高いため、椎間板へのストレスがかかりやすく、そのためL4/5,L5/S1など下位の分節でのヘルニアが多いのです。

 

つまり椎間板性腰痛について考える場合は股関節屈曲の可動域の評価は必須になるということです。

 

 

< 椎間板性腰痛の評価 >

 

① 自動運動検査

まず基本的にどこの評価でもですが、自動運動をしっかり確認しましょう。

 

  •  座位と立位での前屈運動での症状の差

→基本的に立位より座位の方が椎間板内圧が高まるため疼痛の程度は「座位>立位」になります。

 

  •  立位前屈運動時に骨盤前傾運動が生じているのか

→患者さんの後方に立ち両側のPSISを触診し、前屈時に前上方へPSISが動くか確認します。可能であれば骨盤前傾誘導を徒手的にアシストしてみて症状が軽減するのか確認するのもありだと思います。また膝関節を軽度屈曲位にすることでハムストリングスを弛緩させることができるため、この状態で前屈運動を確認するとハムストリングスが影響しているのかよりわかりやすいと思います。

 

② SLR test

 

SLR testはハムストリングスの柔軟性を確認するのに使われる一般的な評価方法だと思います。ハムストリングスの柔軟性が乏しければpassiveにてSLRを行っても最終域で骨盤が後傾して腰椎が屈曲して疼痛が生じてしまうため、これを何度で疼痛が生じたのか?という客観的な評価に用いるのもありですし、腰部にタオルや手を入れて腰椎前弯を確保してSLRを行ってどの程度のROMがあるのか評価するのもありだと思います。また股関節屈曲位から膝関節をどの程度伸展できるかでもハムストリングの柔軟性を評価できるので是非実践してみてください。

 

 

また余談ですが、この単純なSLR testという評価方法でも色々な情報(坐骨神経の滑走性・硬膜および腰椎椎間板ヘルニアにより制限・仙腸関節や腰仙椎による制限などの推測)を得ることができます。今後機会があればそちらにも触れていければと思います。

 

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からだの専門家の理学療法士。 一般向け・セラピスト向けにからだに関する知識やトレーニング方法をお伝えしています。詳しい情報はプロフィールから!!

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