痛みの勉強はここからはじめよう

はじめまして

ライターの三上幸大です。

これから”痛みについて”中心に記事を書いていきますので、よろしくお願いします!

今回は、

痛みについての考え方の歴史を中心に、痛覚伝達系(皮膚や深部組織、内臓における侵害刺激に伴う脳活動)や痛み行動についてシンプルにまとめます。

痛みの学習の入り口として、躓かないように記載するので、最後まで目を通してみてください。

きっと、従来、私たちが慣れ親しんできた”組織損傷に偏った痛みの考え方”を見直すいい機会になりますよ!

【key word】
痛み、痛みの定義、組織損傷、侵害刺激、

 

それでは、いきましょう!

 

41年ぶり!

IASP(国際疼痛学会)による痛みの定義の改訂

2020年7月16日、痛み界隈ではビックニュースが舞い込んできました。
なんと、実に41年ぶりに痛みの定義が改訂がされたのです。

ちなみに、それまでの痛みの定義は、

An unpleasant sensory and emotional experience associated with actual of potential tissue damage, or described in terms of such damage.
(痛みは、実際の組織損傷や潜在的な組織損傷に伴う、あるいはそのような損傷の際の言葉として表現される、不快な感覚かつ感情体験)

なんとなく和訳を読むとわかるな~って感じですかね。
しかし、改定される前のものとはいえ、定義ってちゃんと理解したいですよね。
だけど、こういう定義系ってどのように理解していいのか少し迷いませんか?
少し嚙み砕いて、理解していきましょう。

実際の組織損傷」は、イメージがしやすいですよね。
さて、さっそく理解に困るワードが出てきました。「潜在的な組織損傷…」
例えば、私たちはピンを皮膚に押し当てたときも痛みを感じることがあります。
ピンが皮膚を突き破っていない(実際に組織損傷が起きていない)のに痛みを感じているのです。
つまり、実際に組織損傷が起こらなくても、そういった潜在的な組織損傷でも痛みを感じることがあるということです。
そして、「そのような損傷の際の言葉として表現される」です。
私たちは他人の痛みを直接感じることはできないので、痛みの存在を示唆する言動(痛み行動)を他人がとっている時には、その人は痛みを感じているとする。というような感じで理解していただけるといいかと思います。

そして、新しい定義がこちらです!

An unpleasant sensory and emotional experience associated with, or resembling that associated with, actual or potential tissue damage.
(痛みは、実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験)

+note
①痛みは常に個人的な経験であり、生物学的、心理的、社会的要因によってさまざまな程度で影響を受ける。
②痛みと侵害受容は異なる現象。感覚ニューロンの活動だけから痛みの存在を推測することはできない。
③個人は人生での経験を通じて、痛みの概念を学ぶ。
④痛みとしての経験に関する報告は、尊重されるべきである。
⑤通常、痛みは適応的な役割を果たすが、機能的・社会的・心理的な幸福に悪影響を及ぼすことがある。
⑥言葉による説明は、痛みを表現するいくつかの行動の1つにすぎない。言い換えると、コミュニケ―ションをとれないことは、人間または人間以外の動物が痛みを経験するということを否定するものではない。

改定の理由をIASPのスリニヴァサ・N・ラジャ(MD)は、「痛みのニュアンスと複雑さをよりよく伝えるため、そしてそれが痛みを伴る人々の評価と管理の改善につながることを望んでいる」と述べています。

痛みは、単に組織損傷や侵害受容だけの影響を受けているのではなく、心理社会的要因等の要因が複雑に絡み合っていることを伝えようとしていますね。私は、新しい定義を目にして、そう感じました。

とはいえ、

今回の改訂がされるまで「組織損傷」に視点を置いた内容でずっときていたわけではないようです。

例えば、これまでにも「言葉で伝達できなくても、その個人が痛みを感じ、痛みを緩和する適切な治療を必要としている可能性は否定されない」という注釈がありました。

つまり、過去のIASPの痛みの定義にも注釈があり、そのなかでも触れられていたような内容がまたハッキリと明記されたような印象を受けます。

いかがでしたか?

まずは、IASPによる定義を知ることで、「痛みとの向き合い方」を大雑把に感じ取れたのではないでしょうか?

痛みは「組織損傷」による影響だけを受けるとは考えにくいようです。

 

それを知るだけでも、「痛みの理解」の大きな一歩を歩みだしたと思っていいと思います。

痛みの基礎

痛みの定義に触れていただいたので、あとはサラッと痛みの入口として知ってほしいことを書いて終わりにします。

①痛みの要素と考え方、②慢性痛とは、③各組織に対する侵害刺激についてです。

①痛みの要素と考え方
痛みは侵害受容性、神経障害性、心理社会的という3つの要素から成り立つと考えられています。
痛みを考える場合、この3つの要素のどれかひとつだけが関係しているのではないか?と考えてしまいがちですが、そうではなく、この3つの要素は多かれ少なかれ混在し、その要素の濃さが濃いか薄いか。例えば、侵害受容性の色が濃くて他の要素が薄い、というようなイメージを持てるといいと思います。痛み(特に慢性の痛み)では、痛みを様々な要因に影響された複雑系として捉え、背景にある身体的、精神・心理的、社会的影響を考慮して対応できると素晴らしいのです。

 

②慢性痛とは
IASPの定義では、慢性痛とは「3ヵ月以上に亘り持続または頻発する痛み」とされています。
前述したように、慢性痛の場合は様々な要因が影響している複雑な痛みなので、組織損傷に目を奪われてはいけません。

現在、ガイドラインを開くと、慢性痛には認知行動療法や運動療法が有効とされることが多いです。そして慢性痛に対する物理療法や受動的な徒手療法などの患者さん自身が活動しない、受動的なサポートはオススメされていません。

しかしながら、慢性痛は難しい場合が多いです。動くと痛くなるという学習をしてしまった方が多いため、「動きましょう」と声をかけても一筋縄ではいきません。

病態そのものの性質、患者さんの要因(身体的、社会的、心理的要因)、医療者側の要因が関わっています。

認知行動療法や動機づけ面接法を用いて、患者さん自身が能動的に、患者さんが治療に参加する、
そんな良い循環を作れるような対応が、慢性痛には求められています。

 

ちなみに、

日本国内において、慢性痛を抱える方はおおよそ6人に1人と算出されており、年間約2兆円もの社会経済的損失を被っているようです。
慢性痛に悩む方は40代に最も多いらしく、まだまだ働き盛りの世代の方々が悩まれています。
これから労働人口が減少する日本において、働き盛りの方々が、慢性痛のせいで働けないことによる損失は回避したいものです。

その人の人生のためにも、社会のためにも、慢性痛はかなりホットな界隈といえますね。

③各組織に対する侵害刺激

さて、あれだけ「組織損傷」にとらわれてはいけないと言いましたが、基礎知識として各組織に対する侵害刺激は知っておいて損はありません。
侵害刺激は、組織によって痛み刺激となる場合とならない場合があり、それぞれの組織によって異なるという特徴があります。

皮膚における侵害刺激

・侵害性機械刺激:針で刺す、有鈎ピンセットでつまむ
・侵害性熱刺激:15℃以下の冷却、43℃以上の加熱
・侵害性科学刺激:刺激性化学物質、炎症性メディエーター

消化器(管腔臓器)における侵害刺激

・消化管は切っても、灼いても痛くない!
・消化管に対して、侵害性機械刺激や侵害性熱刺激は侵害刺激にならない。
・消化管は閉塞に逆らって、内容物を移送するために強い収縮や伸展が起こると、強い痛みが生じる。

筋肉は?

筋肉には面白い特徴があります。
それは、侵害刺激を加えなくても痛みが生じるケースがあります。
それは…

血流によって痛みが生じるということです。
わりと有名な内容だと思うので、そこまで驚きはしませんよね。
筋肉は血流が減少している時に強く収縮すると、侵害刺激を加えなくても痛みが生じやすいといわれています。
その一方で、血流が増加していても強く収縮すると痛みが出ることもあるといわれています。
そのため、筋肉の痛みを考える際は、このような特徴を思い出すと役に立つかもしれませんね。

 

最後までご覧いただきありがとうございました。
これからゆっくりと痛みの治療、慢性痛の管理・対応に役立つ記事を書いていこうと思っています。
宜しくお願いします!

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三上幸大

三上幸大

理学療法士/総合病院でICUや術後理学療法を経験後、整形外科クリニック、訪問を経験。「慢性の痛みに関する教育プログラム」を履修@山口大学/痛みの学習をしたいセラピスト向けに、痛みに関する知識や情報をお伝えします。

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三上幸大

理学療法士/総合病院でICUや術後理学療法を経験後、整形外科クリニック、訪問を経験。「慢性の痛みに関する教育プログラム」を履修@山口大学/痛みの学習をしたいセラピスト向けに、痛みに関する知識や情報をお伝えします。