急性痛と慢性痛!BPSモデルとは?

こんにちは、三上です!今回も痛みの学習をしていきましょう!
今回は急性痛と慢性痛!BPSモデルとは?について記載していきます!
BPSモデルの存在を知ってもらうことを目的とした内容にとどめるので軽く読んでしまってください!

まずはおさらいです。
痛みとは、国際疼痛学会の定義によると、

(痛みは)
実際の組織損傷もしくは組織損傷が起こりうる状態に付随する、あるいはそれに似た、感覚かつ情動の不快な体験

何回もくどいですが、痛みは組織損傷だけに依存しないよというメッセージが盛り込まれています。

痛みは様々な分類が可能ですが、時間軸で考えると急性痛と慢性痛に分けられます。そして、急性痛と慢性痛では考え方が違う、ということを知っておきましょう。

急性痛と慢性痛

急性痛 慢性痛
原因 明らか(ほとんど組織損傷)。 不明確、または発見された原因よりも痛みの訴えが大きい。
持続期間 傷害を受けた組織の通常の治癒期間は超えない。 組織の通常の治療期間を超える(3ヶ月以上)。

※痛みの教育コアカリキュラムより

表に示したように、急性痛と慢性痛は原因持続期間が違っています。
急性痛はいたってシンプルですね。原因のほとんどは組織損傷で、組織の治癒とともに改善します。一方で、慢性痛は何やら複雑ですね。いわゆる「こじらせた痛み」なんて表現されてしまうこともあるかもしれませんね。

さて、急性痛と慢性痛のように原因が異なる痛みに同じアプローチをすることは適切なのでしょうか?これもいたってシンプルな疑問ですよね。疑問に感じた方はこのまま読み進めていきましょう!

痛みは、Loeser  JDが提唱した痛みの四重円理論というモデルで表現される場合が多いです。痛みは侵害刺激を神経が受容した後、中枢で知覚されますが、その人の過去の経験や侵害受容時の状況など心理社会的因子をも含めた個人の痛み(感覚)として認知され、最終的に痛み行動(痛みを訴える、病院へ行く、薬を飲むなどの具体的な行動=痛み行動)として表出されると考えられます。

急性痛は明らかな組織損傷を伴っている場合がほとんどであり、末梢における侵害需要とそれによって発生する痛みそのものが問題となるため、リハビリテーションでは物理療法を主体とした生物医学的アプローチが適応となります。

一方で、慢性痛の場合は、痛みを訴えている患部そのものに問題がないことが多く、痛みによる苦悩といった情動面の問題が顕在化し、これは心理社会的な過去から現在までの様々な経験と密接に関係しています。そのため、患者さんが訴える局所の痛みに固執した従来の生物医学的アプローチでは良好な結果が得られません。この場合、リハビリテーションのターゲットとなるのは認知・情動面の問題として生じている痛み行動などであり、生物心理社会学的アプローチが重要とされています。

簡単にまとめると、

痛みのリハビリテーション
急性痛 生物医学的アプローチ
慢性痛 生物心理社会学的アプローチ(BPS)

ということになりますね。
ぼんやりとでも、急性痛と慢性痛は考え方が違うんだなって知っていただけたかと思います!

これを証明するように、慢性疼痛治療ガイドラインでは以下のように記載されています。

CQ40:一般的な運動療法は慢性疼痛治療として有効か?
Ans:運動療法は単独で、安静や生活指導等と比較すると慢性疼痛と機能障害に対して有効である。一方、運動の種類による効果の差については明らかではない。
1)慢性腰痛:1A(施行することを強く推奨する)
2)変形性膝関節症:1A(施行することを強く推奨する)
3)慢性痛頸部痛:1B(施行することを強く推奨する)

CQ42:物理療法は慢性疼痛治療として有効か?
Ans:慢性疼痛と機能障害に対して、物理療法が有効であるとするエビデンスは不足しており、積極的な実施は推奨されない
1)温熱療法:2D(施行しないことを弱く推奨する)
2)寒冷療法:2D(施行しないことを弱く推奨する)
3)治療的超音波療法:2C(施行しないことを弱く推奨する)
4)経費的末梢神経電気刺激療法(TENS):2C(施行しないことを弱く推奨する)
5)低出力レーザー治療(LLLT):2C(施行することを弱く推奨する)
6)牽引療法:2D(施行することを弱く推奨する)

CQ43:徒手療法は慢性疼痛治療として有効か?
Ans:徒手療法は、慢性疼痛と機能障害に対して有効とするエビデンスが不足しており、他の保存療法的治療よりも効果があるとはいえず、積極的な実施は推奨されない。
1)脊椎マニピュレーション、モビライゼーション:2C(施行しないことを弱く推奨する)
2)マッサージ:2C(施行することを弱く推奨する)

CQ44:認知行動療法、患者教育をリハビリテーションに導入し、治療に応用することは慢性疼痛治療として有効か?
Ans:リハビリテーションにおいて、認知行動療法(CBT)理論を導入し、治療に応用することは、リハビリテーションの中で、単独あるいは患者教育や運動などとの組み合わせにより疼痛や身体機能障害、心理状態の改善効果はあるものの、他の治療との効果の差は明確でない。一方、患者教育単独での効果は他の治療よりも乏しいが、他の治療に付加的に用いることで治療効果の増大が期待できる。
1)認知行動療法(CBT):1B(施行することを強く推奨する)
2)患者教育:1B(施行することを強く推奨する)

※慢性疼痛治療ガイドラインより抜粋

どうやら慢性痛に対し、患者さんが受動的な(患者さん自身が活動せずに行われる)治療って全然推奨されていないんですよね。

「〇〇に炎症が起きているから痛い」、「〇〇の可動性が低下しているから痛い」
のように、臨床でよく耳にする言葉たちですが、これらは全て、いわば生物医学的モデルであり、慢性痛を考える際には適さない考え方です。
慢性痛の中には、慢性痛の急性増悪や病態によっては慢性炎症的なのもあるかと思いますが、

一般的に炎症って何ヶ月も続きますか?
関節包内運動にしろ関節包外運動にしろ、もし何らかの制限があっても痛みを訴えていない人ってたくさんいません?




はい。

私も一昔前までは、徒手療法が大好きな理学療法士でした。SJFやSD、AKA博田法はずいぶん勉強したものです。

なので生物医学的モデルで患者さんを考えてしまいがちな気持ちもわかるんです。

私の場合、約5年前に招待された慢性痛のセミナーをきっかけに、急性痛と慢性痛の考え方がずいぶん違っていることを知り、それから慢性痛の勉強を始めました。

皆さんにとって、この記事がそんなキッカケになれたら幸いです。

さて、話が逸れてしまいました。
「なんか急性痛と慢性痛は考え方が違うようだってのはわかるけど、〇〇モデルってのがそもそもわからないな。」という皆さん。ご安心ください!これから紹介していきます!

 

生物心理社会モデル(BPSモデル)

生物心理社会モデル(BPS:Bio Psycho Social)は文字通り、人を「Bio(生物学的)」、「Psycho(精神・心理的)」、「Social(社会的)」の三つの視点で捉えようというものになります。

前回、紹介した痛みの歴史にもありましたが、アリストテレスの時代から心理的な要因が考えられていたわけです。

紀元前4世紀
アリストテレス(古代ギリシアの哲学者、万学の祖
「感覚の起源は心臓にあり、知覚の波が血管に沿って心臓に伝わるが、それが激しいときは痛いという情緒が生じると説明。痛みは感覚でなく(五感【視覚・聴覚・嗅覚・味覚・触覚】)、生理的な反応によって引き起こされる不快や苦しみの情動として捉えた。

1946年のWHOによる健康の定義にも、

「健康とは完全に、身体、精神、霊的、社会的に良い状態であることを意味し、単に病気ではないとか、虚弱ではないうことではない」

このように記載されており、ご覧の通り「身体」の要素だけでなく、「精神」や「霊的」、「社会的」要素をすでに取り入れられていました。

しかしこれらは、戦後、医療が専門化していく中で置き去りにされてしまったようです。

20世紀初頭に生物学的なモデルを提唱したKraepelinの考え方と、心理学的な側面を重視するモデルを提唱したFreudの考え方が主流で、互いに相容れない状態だったようです。

生物学的な立場の考え方では、人間の疾患において「病因=疾患」であるという直線的な因果関係があり、生物学的に説明できると考え、治療にあたっていたとされます。

心理学的な側面を重視する立場の考え方では、心理的な分析を重視し、すべて心理的な要因で説明できると考え、治療を行ってきたようです。

どちらも、互いの立場ゆえに相容れず、教条主義となってしまった。
バリバリ認知的不協和みたいな感じですかね。

そして長年継続してきた、この争いに終止符が打たれたようです。
1977年。精神科医でるジョージ・エンゲルにより生物心理社会モデルが提唱されました。これが生物医学モデルになりかわる、新しい医学観として広まってきたようです。

すべての病気は複数の要素、つまり、生物学的、心理学的、社会学的な要素から成り立ち、すべてのアプローチから整合性がそれ、相互に妥協出るようなまとまったようです。
しかし、この生物心理社会モデルでさえも決して万能ではなく、問題点も批判されているため、十分に理解しつつ治療法を選択していく必要があることがポイントです。

まあ「病気を診ずに、人を診よ」ですね。
あまりに有名な言葉なので、皆さんも聞いたことあるかと思います。

診断名や症状だけでなく、その人がどんなストーリを持っていて、どんな考え方を持っているのか。

そんな要素を大切にして欲しいから、BPSモデルが提唱されているのではないでしょうか。
BPSモデル、非常に興味深いですね。

さて、今回はBPSモデルを紹介することを目的としているので、この辺りでサラッと終わろうと思います!
それでは、またの機会によろしくお願いします!

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三上幸大

三上幸大

理学療法士/総合病院でICUや術後理学療法を経験後、整形外科クリニック、訪問を経験。「慢性の痛みに関する教育プログラム」を履修@山口大学/痛みの学習をしたいセラピスト向けに、痛みに関する知識や情報をお伝えします。

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三上幸大

理学療法士/総合病院でICUや術後理学療法を経験後、整形外科クリニック、訪問を経験。「慢性の痛みに関する教育プログラム」を履修@山口大学/痛みの学習をしたいセラピスト向けに、痛みに関する知識や情報をお伝えします。